白石詩集

斉白石(1863~ 1957)名は璜。字を萍生。白石。湖南省湘潭の出身。貧農の農家に生まれ、12歳で木工を学び、木彫を善くした。書画詩文を27歳から始めた。55歳以降は北京に住居を構えた。画家:陳師曾に彫刻を認められた。その影響もあり画風は一変したと伝えられる。解放後、中国人民美術家協会主席、人民大代表に選ばれた。97歳で逝去。著書:「白石老人自述」(斉白石詩文画彫刻集」等。

    兵後雑感  (其の一)
窮郷亦復有桑麻。    窮郷も亦復 桑麻有り
香稲黄梁処処嘉。    香稲 黄梁 処処嘉なり
四五日中三百里。    四五日の中 三百里
可憐何独只黄花。    可憐なり何ぞ独り只だ黄花なる


    友人園地見蜻蛉
亭亭款款未涼秋。    亭亭款款 未だ涼秋ならず
点水穿花汝自由。    水に点じ花を穿つて汝は自由
落足細看飛上去。    足を落し細かに看て飛び上がって去る
鶏冠不比玉掻頭。    鶏冠は 玉掻頭に比えず


    昔 感
年少時和喜遠遊。    年少 時和し 遠遊を喜こぶ
故園景物懶回頭。    故園の景物 頭を回らすに懶うし
森林繞屋無驚雀。    森林 屋を繞ぐり 驚雀無く
好紙如山毎汗牛。    好紙山の如く 毎ねに牛に汗しむ
衰老始知多事苦。    衰老 始めて 多事の苦を知る
乱離翻抱有家憂。    乱離 翻って抱く 家の憂有るを
相憐只有芙蓉在。    相憐れむ只だ芙蓉の在る有り
冷雨残花徬小楼。    冷雨残花 小楼に徬う


    自 嘲
青鬢離郷忽白毛。    青鬢 郷を離れ 忽ち白毛
苦思無計絶煩労。    苦思 計の煩労を絶える無し
世途行尽堪誇耀。    世途 行き尽くして誇耀するに堪える
妻妾都能打被包。    妻妾 都とく能く 被包を打する


    倒枝梅花
花発無辞天意寒。    花発き天意の寒を辞する無く
一生香在雪中山。    一生 香りは雪中の山に在り
年深自有低心日。    年深く自から 低心の日有り
不欲教人仰首看。    人をして首を仰いで看せんと欲っせざる


    第雨後山村図
十年種樹成林易。    十年樹を種える 林を成す易すし
画樹成林一輩難。    樹を画き林を成す 一輩難し
直到髪亡瞳欲瞎。    直ちに到る 髪の亡きは瞳の瞎ならんと欲す
賞心誰看雨余山。    賞心 誰か看ん雨余の山


    画 蝦
塘裏無魚蝦自奇。    塘裏 魚なく 蝦自から奇なり
也従荷葉戯東西。    也た 荷葉より 東西に戯れる
写生我懶求形似。    写生 形似を求むるに我れ懶うし
不厭声名到老低。    厭わず 声名の老い到りて低きを


    08/03/08    石 九鼎   (雖学漢語学漢詩40年、白石詩解読使我懶求形似、因只翻訳七絶耳)